月とバイオリン
 聞くとシェリーの目がぱっちりと開き、もたれていたカウチの腕から体を起こす。そしてさらには乗り出した。

「見ていたの? ジェラルド。いつ?」

私と目が合ったクリスは、何も知らないことを身振りで示した。

遅ればせながら、茶会の出席メンバーは、この四人きりである。場所は我が家のテラスにて。陽射しの明るい、白い午後だった。


「昨日の夜にお見かけしました。感心しませんね。若き乙女のうろつく時間じゃないですよ」

「いつだなんて質問が出るということは、一日だけのことじゃないんだな。どんな理由でどんな真似をしてるんだ?」

「一日じゃないけれど、三日未満よ。立派な出発点を持っている、確かな行動だわ」

「夢見患者じゃなくて良かったねぇ」

「そんなこと思っていたなら、どうしてすぐに保護してくれないの」

「そんなことは今思いついたからでしょう」

 さらりと思慮の浅さを披露する。

ジェラルドはとても楽しそうにぺらぺらと続けた。
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