月とバイオリン
 妹のシェリーと同じほどに私を思っていてくれるんだって、その気持ちはとても嬉しかった。

あまりに印象的だったために、切なそうな顔が思い出せてしまう。

あの人の言うことは、きかなくてはならないと思う。


けれど、苦しいジレンマだ。それでも、一人でなんて行かせられないと思うから。

側にいたら、何か助けになれるかもしれない、私でも。

シェリーが困って周りを見回したときに、私を是非とも見つけて欲しい。


 すべてはこのことが、日常の範囲にあれば済むことなのだけれど。何も危険ではないのなら。


「その、カノンの人、どんな人なの?」

「どんな」

「覗いて見たんでしょ?」

シェリーの細い指が絡めるようにカップを持ち上げるのを、見る。

背景に、はらはらと散る花びらは、ヴェルベットの白い色。


「なんとなく、遠くにいるみたいな人。そう思ったの」
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