月とバイオリン
ものを考えるスピードが、私たちとは比べ物にもならないほどに速いのではないか。

それが最近、私が思いついた一つの解決。

少なくとも、私にはその跳躍力はない。


 風が急に強くなり、載っていたものが食べられてしまったために押さえを失った紙ナプキンが、お皿から離されて飛んで行った。

緑の芝の上をふわふわと飛び、すぐに蝶ほどの小ささに遠くなる。

日はまだ高いけれど、夜は真っ直ぐに近づいて来ることを、私たちは知っている。

シェリーはゆったりと椅子に座っている。

その訪れまでの緩やかな時間を、まどろみ待とうとでも言うように。


 魅入られる。


そんな言葉を思い浮かべた。








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