月とバイオリン
　地下の方も扉は施錠されていた。

窓はどうだろう？

　だめだ、もちろん。


　かなり希望からはずれるけれど、部屋の窓から入れていただくよりほかはなさそうだ。

格好悪いし、きっと驚かせてしまうけれど。


　屋根から変な姿勢で窓をノックしている自分の姿を思い、ため息をつきながら、シェリーはあきらめてのろのろと階段を上り始めた。

そして途中で足を止める。


　あれだわ。


　声は出さず口だけを形に動かして、くるりと身を翻すと、また階段を駆け下りる。

施錠を確認した窓より上の位置に、独立した鍵を持つ小さな窓があるのを発見したのだ。

高い場所の小窓ならば、油断されている可能性がある。

転がった木箱を起こして飛び乗ると、窓に精一杯手を伸ばした。

開いている。

見つけた、侵入経路。
< 49 / 125 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop