恋合わせ -私じゃ…ダメなの?-
もちろん、お昼ごはんがあたしの唇を通過することもなかったし。


“このまま何も言えないまま、最後の一日も終わっちゃうの!?”


昼休みになっても誰とも話をする気になれなかったあたしは、休み時間が終わるまでまだかなり時間はあったんだけど、とりあえず自分の製造ラインに戻って午後からの作業の準備をすることにした。

「…!」

…とそこに、一人で黙々と溜まりのユニットを流している渋谷祐二の姿があった。みんなはまだ休憩中なのか他に人影は見えない。


チャンス到来♪

他の人がいない今なら告白できる♪♪

……はずだった。


それなのにあたしは彼に気づかないフリをして、彼の後ろを通り過ぎて行ってしまった。


“やっぱ言えない……”


そう思ったあたしは、休憩室の奥のほうの席でメモ帳に自分のケータイ番号を書くと、そのページを丁寧に破り取り、小さく折りたたんで制服のポケットに突っ込んだ。

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