〜うちのバストの秘密〜
くるっと身体を180度回転させて、さあ逃げよう。その瞬間...
「 ねぇ、木崎チャン?」
nee.kizakichan?ネェ.キチャン??
...ねぇ、きざきちゃん?!!
なんども木霊のように同じ言葉が頭をリピートしたところで、やっとうちのバカな脳みそも追い付いた。
そして、冷たい液体が、背筋を落ちていったのを他人事のように感知した。
「どこ行くの?」
今度は確かに背中に投げかけられた彼の声に、ビクッとした。それがうちの返事だと受け取ったのか
うちの肩にゆっくりと手を置いて耳元に口を寄せると
「...逃がさないよ?」
甘ったるい彼の声が響き渡った。
...だめ!騙されちゃだめ!必死で頭を振って再起動させるとうちら大声を張り上げた。
「 あっ!UFO!!」
一瞬彼が怯んだ隙を見落とさず、体育倉庫の扉まで一直線に走ってく。
重い扉を、よいしょっと開けて、シュートの練習をしているバスケ部を横目に物凄い勢いで走り抜ける。
体育倉庫を飛び出す前に、え、ちょっ!木崎チャン?って伊藤の声がしたけど気にしない!
ビックリして呆然としてるであろう伊藤のレア顔を拝見できないのは残念だけど、そこはスルー!!
陸上部と言っても相手は、伊藤は、男。
追いかけられたら逃げ切れる自信もない。
だから後を追えないように、ひたすら曲がり角さえあれば曲がって曲がって、学校の敷地を走りまわった。
ハァハァハァハァ…
さすがに息切れして立ち止まる。でも、やっぱり後ろが気になるし…