久遠の花〜 the story of blood~【恋】


 ―――――――――…
 ――――――…
 ―――…


 朝の目覚めは、なんとも複雑な気分から始まった。

 夢の内容はあまり覚えてないけど、血の臭いや焦げたような臭いなんかが、まだ鼻に残っている気がする。





「――美咲~。そろそろ大丈夫かぁ?」





 下から、おじいちゃんが呼ぶ声がする。

 時計を見れば、もう出かける時間になっていた。


「も、もうちょっと!」


 急いで着替え準備をしていると、ゆっくりでいいんじゃよと、おじいちゃんは言ってくれたものの、そういうわけにはいかない。

 今日は、おじいちゃんと墓参りに出かけることになっている。だから昨日は早く寝たっていうのに、起きたのはまさかのお昼。何度か起こしてくれたみたいだけど、私はまったく起きなかったらしい。

 手早く準備を済ませると、まずはバス停へ向かう。そこから更に十五分ほど歩けば、お墓のあるお寺に到着する。





「――さすがに疲れたのう」





 着くなり、おじいちゃんはちょっと休憩してから行くと言い、境内にある椅子に腰かけた。先に行っててくれと言われ、私はバケツに水をくむと、お墓のある場所へ向かった。


「静か、だよねぇ――」


 今日が休みというのもあるけど、お寺の人通りはかなり少なく、境内に入ってからまだ誰とも会っていない。別に怖いってわけじゃないけど、最近自分に起きていることを考えると、つい、嫌なことを考えてしまう。

 しばらく歩くと――うちのお墓の近くに立つ、緑の和服姿の人が見えた。近付いていくにつれ、それが女性だというのがわかる。そして更に近付くと、女性が立っているのは、うちのお墓の前だった。
< 127 / 296 >

この作品をシェア

pagetop