暁に消え逝く星

 ついにこの時が来た。

 女は茂みをかきわけながら、思った。
 永い苦しみから、ようやく解放されるのだ。
 皇子を追って、二ヶ月以上の永い――永遠にも思えた苦しい旅が、今ようやく終わるのだ。
 右手は、下衣の衣嚢に入れた短刀を確かめる。
 高鳴る鼓動に、身体は震えていた。
 最後の皇子は、一体どのように命乞いをするのだろう。
 弟が受けた苦しみを、皇子も味わってから死なねばならない。
 苦しんで苦しんで、無様で惨めに死んでくれれば、自分も心置きなく弟のところへ逝ける。
 女はもとより、これ以上生きる気などなかった。
 弟を失ってから、すでにこの身は死んだも同然。
 左手でそっと触れた首筋は、柔らかかった。
 男からの迎えがくるまでの待つ間に、女は無意識に首筋を探っていた。
 常に一番強く脈打つ場所を探して。
 確実に、死ねるように。

 待っていて、リュマ。

 女は祈るように呟いた。




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