暁に消え逝く星

 女は、それ以上動かなくなった男の大きな体に抱きしめられるようにして、しばし身を強張らせていたが、男がそれ以上何も言わず、動かないままなので、やがて静かに毛布の中の暗闇を見つめた。
「――」
 男の言葉少なな気遣いが、嫌だった。
 それは、自分の心を弱くする。
 寒さに痛めつけられた体と気持ちは温もりが戻れば癒える。
 しかし、傷ついた心は癒しなど、優しさには求めない。

 復讐だ。

 それ以外の癒しも、救いも、必要ない。
 この地獄のような旅に必死でついていくのは、唯一の望みを自分の手で叶えるため。
 そのためには、どんな辛さにも、耐えてみせる。
 自分に強く言い聞かせて、女は体の力を抜いた。
 規則正しい呼吸と鼓動のリズムが感じられる。
 先ほどまで気になっていた風の音も、今は気にならない。
 凍えて震えていた体に、徐々に温もりが戻ってくる。
 クナと男の温もりに挟まれるようにして、女はいつしか眠ってしまった。



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