…TRIANGLE…

「私、そんなことしてないもん」


 今更、知らないふりで逃れようとする亜理沙を壁に叩きつけると顎を掴んで、ナツに聞こえないように声を潜めた。


「俺の昔付き合ってた彼女、亜理沙と同じ中学でさ……亜理沙って中学時代イジメられてたんだって? ホースで水かけられて服脱がされそうになったことあるらしいじゃん」


 つけまつげののった目が見開いた。亜理沙は身動き一つしない。


「誰にも言わないよ。亜理沙次第だけどな。通学遠くて大変なのに、毎日巻き髪お疲れ」


 くるんとカールした髪を引っ張る。指をはなすと、また元に戻った。



「ナツ、行こうぜ。自転車の後ろに、俺のせてくれ。悪いな」






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