…TRIANGLE…
隼斗は繁華街の駅とは反対方向に歩いた。涼しいとこと言えば、駅前の本屋さんかデパートかと思った。
だけど、今日は違うらしい。
二十分くらい歩いて、大きな公園に着く。自販機でジュースを買って、木陰のベンチに座った。
「穂香、来週うちに泊まりこないか?」
隼斗が真面目な顔をした。すごく真面目な顔をして優しい声を出す。こういう所は、隼斗は大人だと思う。
「ら……来週?」
「うん、ほら単身赴任のお父さんのとこにお母さんが泊まりに行くって言って日あるじゃん? うちの親も法事で北海道まで行くんだよ。
本当は夏休み中に旅行にいきたかったけど、穂香のお母さんに心配させんの嫌だったしな。妹、まだお母さんとケンカしてんだろ?」
「うん……智香、反抗期なんだと思うけど」
「どうする? 嫌なら、別に断ってくれていいよ」
目を細めた隼斗。すごい余裕がある。ペットボトルのジュースをゴクリと飲んで「だいぶ涼しくなってきたなー」と言った。
「泊まりいく」
「えっ?」
「私、隼斗の家に泊まりいく」