猫とボク。
 秋は、タマにとってなかなか過ごしやすい季節らしい。
 庭の枯れ葉にじゃれついてみたり、金木犀の香りにびっくりしてみたり。
 体が一回り大きくなったせいか、ハンターとしてのぐっと腕前も上がったらしい。

 「にゃあ、にゃん!(母上、とったよー!)」
「タ、タマちゃん、よくできたわねっ……あのっ、お外へ……」
 母さんのひきつった声に続き、きゃーとタテハの悲鳴があがった。
 何事かと駆け付けてみれば。
 タマの口許から、だらりとぶら下がっているソレは。
「タタタタタ、タマっ! ! ぺっ、しなさいっ!」「にゃう、うにゃにゃ(とってやったぞ、みんな嫌いなんだろ、コレ)」
「あ、ああ、ボクらの代わりに退治してくれたのね、ありがとう!」
 ありがたい、ありがたいけど!
 見せなくていいからぁ……。

 箒とちり取りを取りに走ったタテハが、タマの前にそれを置いた。
 そこへ獲物をぽとん、とタマが落とした瞬間。

 生命力逞しいソレは。
 ガサゴソと活動を開始した。
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