としサバ
 「どうして」

 遠藤先生が雫に尋ねた。


 「あんなに苦しめられているので、もっと厳しい処分が出るかと思っていました」

 「女子生徒たちは、お母さんも呼んで注意するつもりだから、もうあんな事はしないと思うけど」

 「そうでしょうか」

 「もし、何かやったら、その時はすぐに言ってね」
 「わかりました」

 「用件は、それだけよ。帰っていいわよ」
 「はい。失礼します」


 遠藤先生は自分も同様の気持ちを抱いていたので、雫が何を言いたいか、痛いほど良く分かった。

 雫は職員室を出ると、携帯とデジカメをじっと見詰めた。


 「これだけ証拠があるというのに、この処分は甘過ぎる。学校は、私たちの気持ちを少しも理解はしていない。ひど過ぎるわ」


 雫は悔しさを隠せなかった。


 遠藤先生は、女子生徒3人の母親を学校に呼び、写真を見せながら、事件のあらましを事実通り伝えた。

 そして、吉岡君が言った
「今野さんがいなかったら、登校拒否か自殺を考えたかもわかりません」
と、言う言葉を何度も引用。

 こんな事になる前に、くれぐれもいじめを止めるよう注意して欲しいと、お母さん方に強く釘を刺した。

 男子生徒4人に対しては、今後、吉岡君を姉パンツと呼んで冷やかさない事。

 吉岡君と今野さんの結婚式などを画策して二人を中傷しない事を誓わせ、厳しく注意を促した。


 遠藤先生は7人に対して注意を言い渡すと、ホッとひと息を付いた。


 「これで良し」


 椅子に座りながら、両腕を力いっぱい伸ばすと、遠藤先生は大きく伸びをした。














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