としサバ
27話 土日結婚
 信彦は朝、目が覚めた。

 熟睡をしたせいか、気分は爽快だった。

 目の前で女将が安らかな顔をして寝ている。
 昨日、二人は向かい合って寝ていたのだ。

 女将は素顔のままでも美しい人だ、と信彦はじっと女将の寝顔を見詰めていた。


 「いや、見ないで」


 女将が目を覚ました。

 「ご免、ご免。起こしてしまったね」

 「私、久し振りに良く寝たわ。こんなに深い眠りを味わったのは、何年振りかしら。もしかしたら、学生時代以来かも知れない」

 「僕は複雑だけどね」
 「どうして」

 「だって、隣に若い素敵な男性が寝ているとしたら、寝てられないだろう」

 「そうね。寝るのが惜しいかもね。そう言えば、睡眠不足で目を真っ赤にしていた事があったなあ。遠い昔だけどね。深ちゃんは睡眠導入剤みたいだから、いまの私には助かるわ」


 「僕は睡眠導入剤か」


 信彦が溜息を付いた。



 
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