としサバ
39話 たぶらかし
 信彦は榎本から電話があってからあくる日の午後4時頃まで、トイレと風邪薬を飲む以外は、ずっと眠っていた。

 2日間眠っていたせいか、風邪はほとんど良くなっていた。
 
 信彦はトイレを済ませると、洗面台の鏡に自分を映し出した。

 顔は昨日より大分元気そうに見えた。反面、不精髭は昨日より大分濃くなっているように見えた。

 「いっそ、髭でも伸ばすか」

 信彦は髭を手で触りながら、どのように髭を伸ばそうか、真剣に考えていた。

 2日間、食事らしい食事をしていなかったので、さすがに信彦は空腹を感じていた。

 信彦はカップうどんとパンとバナナを食べることにした。
 ポットに水を入れ、水が沸くまでの間、信彦はパソコンを見る事にした。


 急いで、四友自動車を調べてみると、今日は105円で終えていた。

 最近の四友自動車は75円で底を打ち、113円まで上げてから、また少し下げているようだった。

 バナナをむしゃ付きながら、信彦はパソコンを見ていたが、今日のバナナは格別うまかった。

 四友自動車を今の時点で売るとしたら、ざっと800万円の損が出る。

 信彦には、売る勇気は無かった。




 
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