としサバ
6話 恋人
 雫はさくらんぼのチャットルームで、キリマンを待っていた。

 
 30分ほど待ったが、キリマンは現れなかった。帰ろうとした時、パソコンの画面に文字が並んだ。


 「お久し振り、女狐さん」


 「もう来ないかと思ったわ」


 「また、来るって、約束しただろう」
 「僕が約束を守らないと思ったの」

 「そうじゃないけど」
 「あと5分来るのが遅かったら」
 「帰っていたところよ」


 「僕もいろいろあってね」


 「何があったの」



 「会社が倒産したんだ」
 「就職活動をしているのだけど」
 「現実は厳しいよ」



 信彦は定年をしたとは言えないので、会社が倒産して就職活動をしている、と嘘を付いた。







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