Secret Prince[短篇]




「ゆう?」

「…あー、卑怯だよな、お前って。」




ベッドから勢い良く起き上がり、
裕二はそう呟いて部屋を出て行った。




あら…
これは許してくれたのかしら?




ほわんっと
その光景を見て、私もベッドから起き上がる。





「あ、お風呂…」




昨日そのまま寝てしまったため
お風呂にも入っていない始末。







私はバスタオルを持って裕二の後を追った。







「梨華、パンでもいい?」

「え、うん!」





手際よく準備をするのは裕二。
なんなんだ?



機嫌はもう良いの?淡々と朝食の準備をする有事の手に光る指輪。私とおそろいのシルバーの指輪。





「ふふっ」




あぁ、
もう本当に夫婦なんだ…




ぎゅっと腕の中にあるバスタオルを抱きしめ、嬉しさのあまり表情が緩んでしまった。





「あ、風呂?」

「あ、うん!先に入っても良い?」

「…良いけど。」




何かを考えるように少し黙った裕二は、頷きながら一旦止めた手をまた動かし始めた。
< 130 / 147 >

この作品をシェア

pagetop