先輩と後輩の恋愛事情
放課後、紀田くんにメールで『5時に教室に残っていてくれ』と来た。
正直・・・嫌だった・・・。
だってどんな顔して紀田くんに会えばいいかもわかんないし、変に胸はドキドキするし・・・。
身が持たないような気がした。
そして5時。
教室の扉が開いて紀田くんが入ってきた。
「き、紀田くん・・・!」
「桜井・・・本当に残ってるなんて・・。
素直っていうか、忠実っていうか・・・。
ホント、無防備だよな。
ちょっとは警戒心を持ってくれねぇと悲しいだろ・・・。」
・・・?
紀田くんが何を言っているのかよくわからなかった。
「悲しいって・・・何で?」
「それは・・・男として見られてないんじゃないか・・・とか」
「え?」
「な、何でもねぇ!
それより、そんな無防備だと、誰かに襲われるぞ!」
「おそっ!?」
「・・・冗談だよ。
バーカ」
こつんと頭をつつかれる。
「痛~。
・・・それより、なんか用事があるから私を呼び止めてたんでしょ?」
「・・・それは・・・」
「ん?」
「・・・俺さ・・・桜井のことが好きだ!」
「え!?」
・・・まさか告られるとは思ってなかった・・・。
いや、うすうすは好きなのかなって思ってたけど・・・。
あのキスの後から。
でも、本人から好きだって言われてないし、私の思い違いだって思ってた。
・・・気のせいじゃなかったんだね・・・。
「でも、私は先輩のことが・・・」
「わかってる。
けど、俺の気持ち知っててほしかったんだ。
俺は、黒木先輩が好きなお前もふくめて好きだ!」
真剣な目。
真っ直ぐな思い。
紀田くんの気持ちはうれしい。
けど私はやっぱり・・・。
「ごめんね」
今の私にはそれしか言えなかった。