先輩と後輩の恋愛事情



「黒木…!
やっと現れやがったか…!」




さっきまで余裕そうに笑っていた男の人は、笑っているものの一筋の汗を流している。




「実梨を返してもらうぞ!」




「実梨、無事か!?」




先輩の後ろから佳も出てきた。




「みんな、行くぞ!」




先輩が声をかけるのと同時に




「おー!!」




と佳と後ろから大人数の声がした。




よく見てみると、黒木先輩と佳の後ろにもバットや鉄パイプなどを持った人たちがいた。




「うぉー!
黒木さんの為に行くぜー!」




先輩の後ろにいた人たちが紀田くんを囲んでた人たちに走って襲いかかる。




そこに佳も一緒に走って行っていた。




「てめぇら、怯むんじゃねぇ!
こっちも2年前の敵討ちとして、全力で行くぞ!」




「おぉ!!」





お互いに交じり合って乱闘が起きる。




紀田くんも起き上がってまた戦っていた。






「何よ、これ…」




隣を見ると、早瀬先輩が青い顔をして小さく震えていた。




先輩にも予想外の展開だったのだろう。




「ちょっと!
話が違うじゃない!」




がっとリーダー適存在であるさっきの男の人の肩をつかむ早瀬先輩。




けど男の人さっきの様子とは一変変わり




「あぁ?
っせーんだよ!
どっか行ってろ!」




怖い顔をして先輩を突き飛ばした。




「っ…!」




突き飛ばされた先輩は私の近くに倒れこむ。




「せ、先輩、大丈夫ですか!?」




手が縛られている私は先輩を受け止めることができなかった。




せめてもで、横に倒れた先輩に声をかけた。





すると先輩はギロッと私を睨み、ゆっくりと体を起こした。




「あんたが…あんたが全部めちゃくちゃにしたんだ…。
あんたなんか、いなくなればいいんだ…」




ゆらっと体を揺らして私に近づいてくる先輩はどこからともたく、カッターを取り出した。




「あんたが死ねば、愁だってまた私のとこに戻って来てくれるかも…」




先輩は正気を失っているような感じだった。





「は、早瀬先輩…?」




「許さない許さない許さない!」




シュッと先輩がカッターを持った右手を横にふったかと思うと、タラッと私の左頬から血が流れて切れていた。









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