強引な次期社長の熱烈プロポーズ
「あ、ありがとうございました」

軽くお辞儀をして百合香は車を降りようとしたが、この車のシートが腰が深く掘られている形でうまく立ち上がることが出来なかった。

そんな百合香の様子を見てすぐに柳瀬が手を差し出す。
百合香はその手を取り、そしてもう片方の手が腰を掴んで立ちあがるのを助けてくれた。

半分身を外に出しながら、百合香は改めてお礼を言った。
恥ずかしくて顔を赤くして俯きながら小声で。


すると柳瀬が急に一度放した百合香の手を再び握り、引き寄せると、軽く触れるだけのキスを落とされた。


「そういう顔されたらね」


さらりと言うと、すぐに手を解放してくれ、百合香は車外に出た。
ドアを閉める手が少しだけ震えてる。
怖いんじゃない。高揚した気分がそうさせてる。

「お疲れ様。明日は寝坊してもいいからな。」

そして柳瀬はウインカーを右に出し、あっという間に夜の闇に消えていった。



(また、キス。
あんまりそんなことされたら、期待しちゃうよ。
もう、完全に気持ちが柳瀬さんに傾いてるんだから・・・)


百合香は部屋に入り、カレンダーを見た。


「明日は定休日、か」



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