強引な次期社長の熱烈プロポーズ
程なく柳瀬の誘導で一軒のイタリアンレストランに連れてこられた。
緑に囲まれた、隠れ家的お店ですごくオシャレな雰囲気。
そんなお店を知っている柳瀬は、やっぱり普段も素敵なんだなと勝手に百合香は納得をした。

「好きなのどうぞ」

そして百合香にメニューを渡す。
百合香はそれを受け取ると、真剣にメニューと向き合い沈黙する。


(パスタ…どれもおいしそう。ぺペロンチーノも魚介のトマトソースも捨てがたい。ピザもしばらく食べてないからいいな。
ドリアやパエリアも好きだし…あー悩む。)


ひとしきり百合香が悩んでいる姿を見て柳瀬が笑った。

「ほんと、神野さんは面白いね」
「えっ」
「何に対しても真面目だな、よくも悪くも」

なんのことだかちんぷんかんぷん。
だけどそう笑っている柳瀬の笑顔は今までみた笑顔のどれよりも優しいからつい、赤面して問いただすことを忘れてしまう。

「まぁ、でもそれがいいところか」

柳瀬はそう付け足すとテーブルの水を口に入れ、急かすことなく百合香がメニューを決めるのを待っていてくれた。

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