特上男子
私は自然と智輝さんを見上げ、智輝さんは自然と私を見下ろしている。



『ありがとな。でもこういうのは慣れてるから気にすんな』



コクンッと頭を頷かせた。


それだけで精一杯やった。



『適当に買って帰るか』



智輝さんの手が離れ、切なさが広がった。


もっと触れて欲しい。


もっと近くにいたい。


もっと貴方の事が知りたい。



『志保ちゃんはどれがいい?』



花火をたくさん抱えてしゃがみこんどる智輝さんの隣に同じくしゃがみこんだ。


触れそうで触れない距離。


そんな私たちの間には凄く分厚い壁がある気がした。



「これがいいですっ」

『いいじゃん。最後みんなで勝負だな』

「はいっ」



私の指差した線香花火の入った袋を笑顔で取る智輝さん。


無邪気で子供みたいな笑顔。


モデルの智輝さんだったらしない顔。


そんな笑顔を見せられたら、自分は特別なんやないかと恥ずかしい勘違いをしてしまいそうやん。





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