契約の婚約者
「沙希?」


戸惑う片桐の声が頭上から降ってくる。


「何?」


顔を上げると、ポタっと雫が彼のワイシャツの袖に落ちる。


その雫のしみは次から次へと落ちてくる雫によって段々広がっていく。


「----何で泣いてんの?」


「それは、こっちの台詞だ……」


沙希の大きな瞳からポロポロと涙が零れる。


「お前は本当によくわからない女だな……」


片桐はまた目を細めて沙希を見つめる。


いつもは苦手なその表情が今日はやけに居心地がよかった。




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