アジアン・プリンス
(27)レディ・アンナ
「はい」


ティナはハッキリと答える。

立ち位置がどうもまずい。おそらくはレディの称号を持つ方だろう。ティナの場所からでは、上から話すことになってしまう。


「申し訳ありません。そちらに下りて行ってもよろしいでしょうか?」

「ええ、どうぞ。私の庭じゃないけど、歓迎するわ」


彼女はクスッと笑ってそう言った。



「失礼いたします。私の間違いでなければ、アンナ・クリスティーヌ・フォスター様でいらっしゃいますか?」

「ええ」


彼女はプリンセス・ルシールの娘、レディ・アンナと呼ばれる女性だ。

今夜、イブニングドレスを着てここにいる若い女性は、ティナ以外に彼女しかいないはずだった。


「ああ、でも敬称や敬語はやめてね。あっと、レディもなしでお願い。アンナでいいわ」


気さくに言うとニッコリ笑って手を差し出した。


< 119 / 293 >

この作品をシェア

pagetop