アジアン・プリンス
(41)怒れる天使
息子がとんでもないことをしでかしたとも知らず、補佐官のサトウは苦悩の中にいた。


両親に疎まれたレイは、祖父から次期国王としてひたすら厳しく教育を施された。

サトウは王の目を盗み、レイを自身の故郷、アジュール島に連れて行った。

レイはそこで、ニックや彼の姉妹、父方の祖父母のもとに来ていた従姉のアンナと一緒に遊んだ。束の間ではあったが、レイはサトウのおかげで少年らしい経験ができたといえる。


しかし、祖父亡き後、レイは実の父によってプリンスとしての地位すら追われそうになり……。

レイが英国のパブリックスクールに入れられる時、サトウは付いて行くことを許されなかった。彼は代わりに、息子ニックをレイと共に送り出した。


他の人間は知らなくとも、サトウは知っている。

レイはどんな時でも、女性に心を許したことなどない。常に、皇太子としての役目を第一に考えて行動する。

それがアサギ島では……

女性との抱擁に我を忘れるレイなど、彼は見たことがなかった。


世間は、婚約者問題すらクリアすればレイが誰を花嫁に迎えてもよいと思っているらしい。だが、問題はそんなに簡単ではない。

国王の件もあった。


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