アジアン・プリンス
(42)プリンスのプロポーズ
「ああ、どうしよう。私のせいでレイに迷惑を掛けたら。どうしておとなしくできなかったのかしら……。あんなふうに言い返すなんて、どうかしてるわ」


その日の深夜、セラドン宮殿の応接間でティナはひとりきりの反省会をしていた。

スザンナには、『チカコ様にあそこまで言い返されたのは、クリスティーナ様が初めてでございます。スカッといたしましたわ』などと笑って言われたが……。


「ああっもうっ! 私ってどうしてこうなのかしら」

「まったく、君は大したお嬢さんだ」

「レイ!」


テラスに面した大きな窓を開け、入ってきたのはレイだった。


空には綺麗な満月が浮かんでいる。その月明かりが、彼の全身を包み込んでいた。


「確かに、1週間も連絡をしなかったのは私の落ち度だ。申し訳なかった。だが、いきなり王宮に現れるなんて……」


信じられないとばかり、レイは首を左右に振る。


「ニックはあなたのことが心配なのよ」

「ああ、わかっている」

「彼を処罰しないわよね?」


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