アジアン・プリンス
(46)平和への道標
ティナは息を止めてレイを見上げた。


「だ、だめよ。だめ。あなたは国民の誇りなの! プリンスでなくちゃ駄目なのよ」

「あれはサトウの誤解だ。私は王制の廃止など考えてはいない。ティナ、私の妃となって、国王となる私に力を貸して欲しい」


ティナの頭はフワフワしたままだ。


(誤解? ミスター・サトウの話したことは誤解なの?)


一瞬、喜びそうになったティナの目に、自分の金色の髪が映った。


「そ、それは……いいえ駄目よ。私はアメリカ人なの。それに、私の事件を知ってるでしょう? 私なんかを妻にしたらあなたが笑い者になってしまうわ」

「いや、もう遅い」

「えっ!?」

「周りを見てくれ。もう、君は逃げられない」


ティナが周囲を見回したとき、船のデッキや着岸ゲートから、数え切れない人間が見下ろしていた。


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