美顔 (美人女医と私のカウンセリングの記録)
 初めて、あのお顔のことを意識したのは、小学校三年生の頃だったように記憶しています。母が入院し、近所の親戚の家に一ヶ月ほど、預けられた時期があったのですが、その親戚の家には、男の子がなかったので、私を預かることを大変喜び、そして一ヶ月間、本当にかわいがってくださいました。
 ある日、遠足があると言うことで、伯母が腕に縒りをかけて弁当を作ってくれたのですが、この弁当が大げさではなく、おせち料理かと、見間違うほどの豪華絢爛ボリューム満点弁当だったのです。
 伯母がその弁当を手渡してくれた時に、私は自分の目を疑いました。
 こんなもの一人で食べきれるわけが無い。そう思うと同時に、食べ残しがあった時の伯母の表情を想像して、絶対に残すわけいかぬのだ、と言う責任感で小さな胸がいっぱいになりました。
< 3 / 37 >

この作品をシェア

pagetop