佳き日に
「だがまー、梔子の親も幸せ者じゃねぇの。死んだ後もこんなに想ってくれる人がいて。」
「兄さんも死んだ後に敵討ちしてもらいたいんですか?」
「当たり前だろ。嬉しいじゃねえか、死んだ後も俺のこと忘れないでいてくれる奴がいたら。」
軽い口調だが、その言葉は鉛丹の本心だろう。
「じゃ、兄さんが死んだら僕が敵討ちしてあげますよ。」
「まじか。よろしく。」
敵討ちをしたって死んだ人が戻ってくるわけもない。
意味はない。
それでも、残された人の心を癒す効果は少しくらいあるのだろう。
もしも鉛丹が殺されたとしたら、桔梗はきっとその殺した相手を探すだろう。
そして、殺す。
意味のないことだと、相手を殺したところで鉛丹が戻ってくることはないと分かっていても、きっと殺すのだろう。
そういうものなのだろう。
唯一の肉親として14年間も共に過ごせば、もう当たり前となってしまったのだ。
隣に鉛丹がいることに。
失ったときのことを考えるのは、今はまだ怖い。
「兄さんは、殺してくれますか?」
「誰を?」
「僕が殺されたとき、僕を殺した相手を。」
桔梗がそう言った後の鉛丹の顔は、まるで。
雑魚相手にマシンガンをぶっ放して殲滅させた後のようだった。
つまり、鼻で笑われたのだ。
イラッとした。かなり。
一発殴ってやろうか、と桔梗は本気で考えた。
だが、実行に移す前に鉛丹の言葉によって遮られた。
「お前、そりゃねーよ。」
そう言っている間も、鉛丹はずっと半笑いだった。
殴りたい。
「お前は死なねぇよ。」
「・・・はぁ。」
「俺が生きている間は、お前は死なねぇよ。」
謎のドヤ顔。
言っていることもわけが分からない。
桔梗は頭を抱えたくなった。
兄さん、頼むから日本語話して下さい。
桔梗はその思いをすべて込めたかのようにため息をひとつついた。