狼ゴコロは愛のイロ

┠危険な手紙



車両を降りると、雅を探す。



人一倍背が高いから、あたしが彼を見つけるのは簡単。



彼は中々あたしをみつけられないんだけどね。



「雅!」



傍に行って手を握ると、ハッとこちらを見る。



「あ。また俺の負けだな」


「ふふ、あたしは人ごみに紛れちゃうからね」



朝のラッシュ時の地下鉄の込み具合は半端じゃないから、よっぽど目立つ格好をしないと難しいよね。



「それじゃぁ、家でな」


「うん。お仕事頑張ってね」


「玖美も」



その後、あたし達は駅を出て別れた。









「三上さん、おはようございます」


「おはようございます。佐藤さん」



いつもの清掃員の人に挨拶をして、エレベーターに乗り込む。



うわ、満員だ。


その時



ゾワッと寒気が走った。



全身に鳥肌が立つ。



「悪い、宗苑。俺だ」


「え、新村さん」


「手が挟まって動けないんだ・・・」



彼はあたしの先輩で、仕事を色々教えてくれた人でもある。



首を後ろに向けると、確かに壁とあたしのお尻に挟まれてる。



< 39 / 122 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop