閑中八策
神仏の意外な性別
 最近の若者には「キューピッド」を女の子だと思っている人が多いらしい。アニメ調のイラストのキューピッドのほとんどが少女姿だからだ。
 神様、仏教の聖者、天使などにはその性別に関して微妙に歴史的変化をしているものもある。

 日本では観音菩薩、いわゆる観音様は女性だと思われている。仏像もたいていは一見女性に見える柔らかい造形だ。
 だが、仏教の経典の記載によれば観音菩薩は明らかに男性である。

 そもそも初期の仏教では「女性は悟りを開く事が出来ない」という教義があった。
「変成男子(へんにょうなんし)」という仏典のエピソードがある。
「サーガラ竜王の娘」としか名が伝わっていないが、美人で気立ても良く、信仰心も厚い、お釈迦様が感心する乙女がいた。

 だが女は悟りを開いて仏にはなれないので、お釈迦さまがその娘を男性に変えたというのだ。
 今で言う性転換だが、普通の女性は来世で男性に生まれ変わって、かつ修行して悟りに至らないと救われない存在とされていた。

 現代の日本女性は怒り狂うかもしれないが、仏教ですら経典が編纂された時代では男尊女卑が当たり前であり、その影響を免れなかったという事だ。

 従って観音菩薩は男性である。
 ただ変身能力を持っていて老若男女どんな姿にもなれた。
 うら若い乙女の姿に変身して人々を救ったという逸話が有名なため、少なくとも日本では観音菩薩はいつの間にか女性という事になったらしい。
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