絶対束縛論


 彼は今日も、玄関で彼女を待っていた。


「おはよ」


 いつの間にか成長してしまった彼の身長は、とうに彼女の背丈を軽く15㎝は追い抜かしている。

彼女は鋭い目で彼の顔を見上げる。彼の顔を見上げなくてはいけないことに、彼女は少しの不満を抱く。

 真尋(まひろ)のくせに私を見下ろすなんて気に食わない、――と。


「……どうした?」
「なんでもない」


 不機嫌そうな彼女の様子に、何か機嫌を損ねるようなことをしてしまっただろうか、と真尋は心配になった。
彼女の顔色を窺いながら、思い当たるふしがあるかを必死に考えるか、答えにたどり着けない。

 そもそも、彼女の機嫌が悪い原因は、身長のことなどではない。
それに気付いてくれない真尋に、話してくれない真尋に不貞腐れ、八つ当たりをしているだけなのだ。

進みだす彼女に真尋は急いでついていく。そのまま少しの間彼女の横を歩いても無言のまま、二人が通う高校に段々と近づいてく。



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