愛は満ちる月のように
古い木製の扉を開いて中に入ると、いつものカランという音が鳴った。


一階の窓と壁際に四角いテーブル席が並び、センターには円形のテーブル席が置かれている。

全部で六十席程度、立食パーティなら八十人程度まで可能という広さだ。

二階にはパーティションで仕切られた席がある。仕切りを取れば、十五人くらいまでの会食に使えた。

店内は淡いブラウンを基調とした色で纏められていた。テーブルもイスもホワイトオーク材を使った特注品。オフホワイトのテーブルクロスもジャガード織りのフランス製だと聞いた。


「いらっしゃいませ、一条さま……あの、ランチは終わってしまったんですが」


白いブラウスに黒のスカート、その上に黒いカフェエプロンをつけたウエイトレスが足早にやってくる。


ランチタイムには行列ができる店だ。今は客もまばらで、本日の予定数は終了と外にも出ていた。


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