愛は満ちる月のように

(2)姉と弟

「小太郎……本当にどこも痛いところはない? 気分は悪くない?」


四畳半の和室は小さめの座卓をリビングに出しても、ふたり分の布団を敷いたら畳の見える場所はほんのわずかになった。

美月が枕カバーを付けながら尋ねると小太郎はふわりと笑う。


「大丈夫。これでも結構丈夫になったんだよ」


その温かな笑顔は八年前と少しも変わっていない。そのことにホッとして、美月は涙が零れそうになる。


小太郎は平均に比べてほんの少しIQが低かった。療育手帳をもらったり、特別支援学校に通うほどではない。今も公立中学校に通っているが、成績は下から数えたほうが早く、普通科高校への進学は厳しいと聞いている。

体格も幼いころから標準をはるかに超えていた美月に比べ、かなり小さめだ。小学校に上がる前は病弱で、美月の知るだけで三度も救急車で運ばれていた。

弟ができる前、美月の願いごとは『早く大人になりたい。もっと大きくなりたい』だった。しかし、小太郎という弟ができて、彼女の願いごとは『小太郎が元気になりますように。無事に大きくなりますように』に変わった。


「でも、お父さんもお母さんもよく賛成したわね。タンデムで七〇〇キロもの距離……姉さんだったら反対するわ」

「お母さんは心配そうだった。でも、お父さんが……お姉さんに会ってきたらいいって」

「伊勢崎のおじい様はお元気? 千早の会長も……入院されたって聞いたけど、大丈夫なのかしら?」


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