愛は満ちる月のように
“夫”の存在だ。

既婚者の場合、夫の合意が不可欠となる。これより先の面会には夫を伴って行かなければならない。また、明確な理由も聞かれるという。


「このままの状態で私が子供を産めば、自動的にあなたの実子になってしまうの。それだとあなたに迷惑をかけてしまうから。離婚していただけますか?」


悠は必死に頭の中で整理しようとする。


「君が子供を産みたいという気持ちはよくわかった。ひとつ確認しておきたい。例の……“桐生”の件はすべて片がついたのか?」


桐生とは美月の亡くなった母の旧姓。

その問いに美月は口を引き結んだ。悠は大きく息を吐きながら、


「美月ちゃん……なぜ、僕らが結婚することになったのか、もう一度ゆっくり考えてから出直してくるといい」

「でも、私は」

「君にはまだ相当の資産がある。それに……」

「私はもう成人してるわ! 二度と……家族に迷惑をかけることはないはずよ」


美月の反論に悠は首を振る。


「いや、今度は子供ができる。子供の命を盾に結婚を迫られても、君はノーと言えるか?」


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