愛は満ちる月のように
美月の剣幕にふたりは息を飲むが、その様子に気づき、彼らの仲間が何ごとかと集まってくる。


「は、はんざい? だったら警察でも呼べよ。俺が何したって言うんだ!?」


男は仲間がいることで気が大きくなったのか、美月に詰め寄りはじめた。

だが、その程度で怯む美月ではない。


「いいわ。呼べと言うなら呼んでも構わないけど、困るのはそちらのほう……」


言いながら、美月が携帯を取り出したとき、その手を背後から掴まれた。



「すまないね。こう見えて妻も酔ってるんだ。酒の上でのことだから、お互い様ってことでいいかな?」


悠だった。

いきなり携帯を取り上げられ、しかもとんでもないことを言われて美月は真っ赤になる。

反論したいが、横から強く抱きしめられては声も出せない。

先ほどの青年が「もちろんです。こちらこそすみません」などと小さな声で返した。


あっという間に周囲は、和やかなお花見ムード一色となる。

そんな中、美月は“酔っ払い”に認定され、夫である悠に肩を抱かれ、その場から離れたのだった。


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