愛は満ちる月のように
引き千切られた電話線、そして電話機本体も床に転がっている。


「落ちついて……とにかく、落ちつくんだ。すぐに」

「私はただ、家族で静かに暮らしたいだけなのに。他には何もいらないのに。ママが寿命を縮めたのも、桐生のお金や権力を欲しがる連中が追い詰めたせいだと聞いたわ。私は……幸せになってはいけないの? だったらどうして、この世に生まれてきたの!?」

「そうじゃない……そんなことは」


悠は美月の尋常ならざる気配にたじろいだ。


「私のパパは本当のパパじゃないのよ。私もママも、周りに迷惑をかけるだけの存在。孤独に生きて……最後にはひとりぼっちで死んでいくのよ」


白いシャツに縋り、美月は肩を震わせて泣いていた。

自分の国に帰る、ただそれだけのことに、彼女は勇気を振り絞ってやって来たのだろう。


「君が迷惑だなんて……誰も思ってない。もちろん、僕も……」


悠の言葉を聞くと美月は顔を上げた。

充血した瞳からポロポロ涙を零しつつ、


「そうね。そうして優しい人を傷つけて、犠牲にして生きていくの。あなたの言うとおりよ……私が母親になれば、今度は子供を巻き込むわ」


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