隣に魔王さん。


朝、公園で桜の花が散るのを見ながらコウくんを待っていた。


お気に入りの服を着て
少しだけ髪の毛を巻いてみて
お姉ちゃんの香水を借りて



コウくんにせめてでも近づけるように、ってお姉ちゃんにお願いして服も選んでもらった。



約束の時間まであと3分。
コウくんはまだ来ない。










「………遅いな」


ぽつりとつぶやいた言葉。
時間を見れば約束の時間からもう30分が立っていた。



もしかして待ち合わせ場所間違えたのかな………。


そう思って電話してみると案の定、間違えてたらしく電話を切ってコウくんの待っている場所へ向かう。



電話の声を聞いて、はやく会いたくて駆ける。



一秒でも、はやく貴方に会いたい___





暫く走って大きな桜の木が見えてその下に見慣れた、大好きな人が見えて


「コウくんッ!!!」


大きな声で名前を呼んで。




笑顔で手を振ってくれて、後少しで。
というところでコウくんが焦ったように叫ぶ。


「なつかっ!!!」

「え………?」


ギュッと温もりを感じて、すぐに衝撃が体を駆け巡る。


痛い、という感情よりも
戸惑う、思いが支配する。


「な、……つか」

「……コウくんッ!!!」


苦しげな、コウくんの声が微かに聞こえて体を起こそうとするけどズキンと身体中が痛んで動かせない。
目の前に苦しげに微笑むコウくんの顔が見えて
視界が滲む。


「……無事で良かった」


周りが騒がしい。
なのに、シャットアウトされたみたいにコウくんの声がクリアに聞こえる。


「………なつか、……好きだよ…、」


優しく、優しく、微笑んで。


コウくんは私の額に口付けを落とした。









暗くなる視界の中で最後に見えたのは、


優しく、切なく、微笑う


大好きな貴方でした___。


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