ある夕方の拾いモノ -狐と私、時々愛-
愛は番う





夢を見た。
内容までは覚えてないけど、あったかくて幸せな気持ちになれる、そんな夢。


…このままずっと微睡んでいれたらいいのに。


そう思った瞬間、何かが私の顔に影を差した。










「―――ん、…」


目を覚ますと、いつもの濃紺の着流しに袖を通した愁がいた。
私を腕に抱いているらしく、私のまぶたが開いたのを確認するとすっと顔を近づけてくる。


そうしてそのまま触れるだけのキスを落とし、私の髪をその指で緩く梳いた。



「気分はどうだ?」


その言葉に眉をひそめかけて、私ははっと目を見開いた。





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