天空のエトランゼ〜哀しみの饗宴(魔獣因子編)〜
第9話 無酷
「それにしても………こいつらの体を移植しないと、戦えないなんて……ククク…あり得ないでしょ」 

死体の安置室で、中村は笑った。

中村だけではなく、安置室内にいる学者達も笑った。

「……」

中村達の前で、腕を組み、死体を眺めている舞子に、向かって、笑うのをやめた中村が、きいた。

「しかし、マヤ様…。何故に、あの女に、このことを教えたのです?あやつが、テラ側についた時、厄介では…」

中村の言葉に、舞子はフンと鼻を鳴らし、

「どうでもいいことだ…」

ぼそっと呟くように言った。

少し苛立ちすら、感じたその言葉に、中村は焦った。

「しかし…我々…ブルーワールドから来た者は、この世界の魔物をどうするのか……。ここでの結果で、こやつらと、我々の体は、同じであることがわかりましたし…」

中村は、死体に開けた傷口から、内部を見た。

「我々魔物と……つまり、我々は人間から、進化したということが…」

「違う」

舞子は、中村を睨んだ。

中村は、身を震わした。

舞子は、中村とその後ろにいる学者達を、目だけで見回すと、

「お前達と違い…こいつらは、人間から生まれた。例え、内部構造が変わろうが、その事実は消えない」

「つまり…あんたも、人間ということ?」

いつのまにか、安置室の中に、リンネがいた。

舞子は、リンネの問いには、こたえないで、

ただ黙って立つ。


「ヒイイ!」

中村と学者達達は、思わず床から飛び上がった。

舞子を中心にして、床が凍り始める。

「フン!」

リンネが一歩前に出ると、凍りついた床が溶け、燃え上がる。

「文句があるんだったら、態度じゃなくて、言葉に出してよね」

リンネは、軽く笑った。

「あたしは…」

舞子は、リンネに背を向け、

「人間ではないわ」

「じゃあ…」

リンネは肩をすくめ、

「質問を変えるわ。どうして、あの女のもとへ行かすようにした?あの女は、ブルーワールドへの道を開く鍵になる。例え、今はあちらが、気にしていなくても」

リンネの言うことは、もっともだった。

舞子は振り返り、

「あの女は…危険だからこそ…。あんたも気付いているはずよ」

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