天空のエトランゼ〜哀しみの饗宴(魔獣因子編)〜
第19話 別離
さよならは、どうしたらいいのだろうか。

毎日が辛いから、環境を変えて、まったく違うところで、やり直そうとしたけど…。

あたしはあたし…変わることはない。

無理した明るさも、一生懸命かき集めた話題も…チープなものだ。


時任さつきは、アルバイト先を何度も変えていたけど…満足を得ることがなかった。

偉そうに指示だし、他愛もないことで怒り、アルバイトにあたることで、優越感を感じている正社員という人間も、好きになれなかった。

だけど、実家の親は心配気に、

「早く…落ち着いて…。正社員にならんかいな」



親のいう意味もわかっていたけど、

口下手で引っ込み思案のさつきには、会社という組織に、ずっといることは、辛くって、耐えられなかった。

人は必ず、弱い者をつくり…いじめとまではいかなくても、軽く嫌味をいうことは、日常茶飯事だ。


さつきは、アルバイトを転々としながら、自分が人の組織の中で、どうすればいいのか…悩み続けていた。


二十歳になるさつきより、少し年下の女の子達が、家も持たずに、自由に生きる姿が、うらやましく、

眩しかった。


だけど、彼女達の話を聞いていると、楽というわけではなかった。

同じ年代の仲間間での問題に、苦しんでいた。


人の苦しみは、人によって、生まれていた。


ただ…生きていくだけなのに…こんなに苦しいのだろうか。

さつきは、アルバイト先の事務所の窓から見える…空を飛ぶ蝶を眺めていた。

蝶は、何を考え飛び…鳥は何を考えて生きるのか…。

彼らも、悩み苦しんでいるのだろうか。

どうして…人はただ…生きるということが、こんなに辛いのだろうか。




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