天空のエトランゼ〜哀しみの饗宴(魔獣因子編)〜
第4話 救金
「あなたは、素晴らしい人間だ」

見知らぬ人に、そう言われたら、あなたはどうするのだろう。


誰にも、認められない世界で…

あなたのことを笑顔で認めてくれる人。

あなたの人柄を褒め、素晴らしいと

簡単に口にする人々。


あなたは、その人達をどう思うだろうか。

孤独で、押し潰されそうな日々の中、

あなたに笑顔を向ける人達。

あなたは、その笑顔に救いを求めるのだろうか…。


少なくとも、私はこう思う。


そんな笑顔や言葉に、救われてはいけないと。


なぜならば、その後…

あなたはその笑顔に、見返りを求められるからだ。


善意の寄付。

お布施。



この世で、愛や幸せ…平和や自由、可能性を口にする集団に、

貧乏はいない。


世界の戦場を飛び回り、医療に携わる人達には貧困が多い。

なのに、争いのない土地で、立派な建物の中で、

笑顔ともっともらしい言葉を並べる人達に、金が集まるのは、どうしてだ。





「あなたは、素晴らしい可能性をお持ちだ!それを周りが気づかないだけです」

満面の笑顔を浮かべ、気の弱そうな女に話しかけている中年の男は、小太りでテカッた顔が、油切っていた。

「はあ〜」

力なく項垂れる女はまだ、半信半疑であった。

「自信を持って下さい。あなたは、素晴らしい」

「はあ〜」

力なき声を出す女を見て、男は話題を変えた。

「先に送ったビデオは、見て頂きましたか?」

男の質問に、女は頷いた。

「そうですか!ありがとうございます」

男も笑顔で頷くと、

「今日はですね。ビデオを見られたらお分かりのように、あなたと同じ年齢の方々を迎えて、セミナーと言いますか…交流会を行っているですよ。宜しければ、参加なさってみたら!あなたのお友達も参加していますし」

男の提案に、女は頷いた。


< 60 / 227 >

この作品をシェア

pagetop