天空のエトランゼ〜哀しみの饗宴(魔獣因子編)〜
第6話 家族
「や、やめてください!」

グレイのスーツを着た女は、若かった。

まだ十代かもしれない。

新入社員だと思われる女は、新品の鞄を抱き締めながら、逃げていた。

人通りの少ない路地裏に、入り込んだ女は、もうすぐ行き止まりに辿り着く。

あちらこちらに、不信者注意と、訪ね人のポスターが貼られていた。

「最近…この貼りのせいか…女が、よってこないんだよ」

女を追う男の1人が、ポスターを引きちぎった。


男は、三人いて……女を行き止まりに誘導できたことで、本性を口にしだした。

「でも、ここは絶好の場所だぜ!」

「女を襲うのにな!」

楽しそうに笑う二人の男を押し退けて、にやけた男が前に出てくる。

三人とも、見た目は普通の男だ。髪を、染めてる訳ででもない。

大学生くらいだと思われる。

「お金なら……わ、渡します!」

女は、慌てふためきながら、もっといたバッグから、財布を出そうとした。


「きゃっ!」

前に出た男は、女のバッグを蹴り上げた。バッグは、地面に転がった。

男は女に、顔を近付けると、

「金なら、あるんだよ!俺がほしいのは…」

震える女の顎に手をかけ、無理矢理上げると、笑いかけた。

恐怖に歪む…女の顔を、舐めるように見、

「その顔だ!その顔が、たまんねえ〜!」

うっとりした表情を浮かべた。

「おい!早くしろよ!」

「もう我慢できないよ!」

後ろの二人が、前の男を急かした。

「……よかったな…あんた…明日から、価値観が変わるぜ?使用後…使用前とはなあ!」

たまらなく嬉しそうな男。

女の震えは、止まらない。

「もっと歪めろよ!」





「ククク…」

震える女の体が、さらに震えた。

だが……。

「ハハハハ!」

それは、笑いから来るものだった。

「ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!」

顎を掴まれながら、女の笑い声は、止まらない。

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