天空のエトランゼ〜哀しみの饗宴(魔獣因子編)〜
第7話 理由
警官は上半身裸のまま、明菜に向けて、頭を下げた。

「俺には、あんたの剣が必要なんだ!」

玄関で、土下座する警官の姿…そして、機械により、無理矢理接合された…痛々しい肩口。

明菜はとっさに、化け物ではないと判断した。

それでも、少しは警戒しながらも、明菜は部屋の奧から、玄関横のキッチンまで、近づいた。

持っていたホウキをそばに置くと、明菜は土下座する警官に、話し掛けた。

「…まず、あたしの質問に答えて下さい」 

その言葉に、警官は顔を上げた。

「どうして…あたしが剣だと知ったのか…。そして、あなたの正体と…やろうとしている目的……。そして、先程のおばさんの変化…あたしには、普通のおばさんにしか見えなかった…」

明菜は、今朝もおばさんと挨拶を交わしていた。気さくで、いい人ぐらいしか認識していなかった。


警官は正座し直し、明菜の瞳を見据えながら、こたえはじめた。

「あなたが…剣…次元刀だと俺に告げたのは、守口舞子という女だ…」

「守口舞子…」

学生時代…生徒会副会長だった女。明菜の一つ上の為、記憶には残っていない。

生徒会会長だった美奈子からは、名前をきかされていた。

(クール過ぎる女と…)



警官は、警察手帳を明菜に向かって差し出し、

「神野真也…。去年まで、刑事課にいた。今年からは、交番勤務だったが…退職した。いや…首になったと言った方がいいかな…」

神野はフッと笑い、

「本当は…手帳も制服も…銃も返さなければいけないんだが……やつらに、追われていたからな…」


「やつら?」

神野は、明菜を見据え、

「人ならざるものからね」

自分の右腕を、明菜に見せた。

「これは…俺の腕ではない…。俺がこの世で、一番愛した女の腕……。俺が、やつらと戦う為に、残してくれた腕だ」

黒く変色し、筋肉が盛り上がった腕は…女の腕には、見えなかった。

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