桜空あかねの裏事情
冗談混じりに言えば、兄の呆れたような溜め息が聞こえた。
『仕方ねぇだろ。今日は仕事があったんだ』
「どっかに行ってたの?」
『菊地家の方にちょっとな』
棗の言葉に、あかねは昨日言われた事を思い出す。
「…菊地家って、私の家と並ぶ名家だっけ?」
『ああ。俺達と同じ御三家の一つだからな。歴史的にはこっちのが古いが、あんま大差ねぇな……ってお前よく知ってたな』
「ん。母さんが言ってたような気がした」
あやふやに答えるが、棗は特に気にかける事もなく話を続ける。
『……まぁそんな事はいいけどよ。用件は何だ?』
「あ、うん。兄貴が持ってた異能者についてって本。あれ貸してほしいんだけど」
『構わねぇが……どうした?』
予想すらつかなかったであろう。
その要求に、驚きと怪訝が混じった声音で棗は尋ねた。
「別に。ただ最近、異能者の事を聞くようになったから、少し知識を入れておこうと」
ただでさえ口うるさい兄に、まさかチームのリーデルになるかも知れないからとは、とても言えない。
だが今の発言も強ち間違ってはいないとあかねは密かに思う。
『異能者が身近にいるのか?』
「いけない?」
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