桜空あかねの裏事情
「聞きたい事、か。答えられる範囲ならば答えてやろう」
「あなたはあかねをこの組織のトップにしたいんですよね?」
「そうだ。彼女はリーデルに相応しい器を兼ね備えている。友人である君にも充分、理解出来るだろう」
「そうですね。でもオレが聞きたいのは、そんな事じゃない」
自分の予想が外れていたからか、ジョエルにしては珍しく不思議そうな表情をしていた。
しかしそれは微々たるもので、昶はその様子に気付いていなかったが、そんな事はどうでも良いと言わんばかりの真剣な表情で彼を見ていた。
「単刀直入に聞きます。あなたがあかねをリーデルにする目的は何ですか?」
その瞬間、空気が凍り付いたように辺りが静かになった。
ジョエルと昶、二人の周りだけではない。
離れた場所で話していた結祈やギネヴィア、そして朔姫達でさえも、口を閉ざしその様子を伺っていたからだ。
それは常々思っていた疑問の答えが聞きたいからか。
はたまた怖いもの知らずの昶を感心、或いは心配しているのか。
少なくとも、何とも言えぬ複雑な表情をしていたのは確かだった。
しかし当人であるジョエルは、笑みを崩すことなく口を開いた。
「……目的、ね。残念だがそんなものはない。ただの気紛れだからな」
「そうですか。何か残念です」
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