桜空あかねの裏事情
終章

20XX年 6月 大徳高校 第三理科室





「やっぱ沖縄がいいって!朔姫もそう思うだろ?」

「別に。みんなと行けるならどこでも。あかねに任せるわ」

「んー………」


昼休みになって数分が経過した頃。
信乃と葉風が弁当を持って、理科室のドアを開ける。
既にあかねと昶、朔姫がいたのだが、不思議なことにいつになく真剣な面持ちで何やら話をしていた。
二人は疑問に思いながらも近付くと、慎太郎は彼らの周辺に置いてあった雑誌に目がいき、思わず手に取る。
どうやら旅行雑誌のようで、表紙には沖縄という文字が大きくあった。


「旅行にでも行くのか?」

「まぁね……って汁子。いるなら言ってよ」


背を向けていたからか気付いてなかったあかねは、そう言いながら移動して二人のスペースを作る。


「旅行かぁ。三人で行くの?」

「ううん。他にも知り合いが何人か。でも困ったことに場所が決まらなくて」


信乃の問いにあかねは苦笑する。
二日ほど前、館で昶達と団欒していると『夏と言ったらやっぱ旅行だよね~』と陸人が言いだし、いつの間にかオルディネのメンバー全員で旅行に行くことになった。
そしてその流れで、リーデルであるあかねが旅行先を決めることになり、旅行先の希望を一通り聞いみたところ、全員が見事に違う旅行先を挙げたのだった。
それによりあかねは旅行先を決めることが出来ず、ほとほと困り果てていた。


「陸人さんは大阪でギネヴィアさんは福岡で、駿センパイは北海道に泰牙さんは京都だもんな。しかもオレは沖縄だし」

「あと結祈は箱根だったかしら。どのみち全員バラバラよね」


聞いたのは自分だが、まさかここまで意見が食い違うとは思わなかったと、あかねは内心一人でごちる。
私の意向に合わせると言ってくれた朔姫達がせめてもの救いだが、だからと言って悩みが解決するわけではない。

.
< 778 / 782 >

この作品をシェア

pagetop