《短編》家出日和
結局、大我さんは本当にうちに来てしまった。


てゆーより、あたしが知る限りこの家に、誰かが入ったことはなのだけれど。



『亜里沙。
話の続きだ。』


壁に背をつけて床に視線を落としたままのあたしに、

俊ちゃんは真上から低い声を落としてきた。


それをいつも俊ちゃんが座っているイスに腰を降ろして、

遠巻きに見つめる大我さん。



『…俊二。
高校生なんだから、少しくらい遊ぶの許してやれよ。』


瞬間、俊ちゃんは大我さんを睨み付けて。



『…口挟むな。
それに、遊んでる程度ならまだ許してやるよ。』


『…じゃあ、何?』


『俺がそれを聞いてんだよ。』


キョトンとして聞く大我さんに、相変わらずキレた口調の俊ちゃんが言って。


他人が居る分ヤられないのだと思うと、

あたしも少しは感謝しなければならないのかもしれない。



『大体俊二、昔から子供じみてんだよ。
妹みたく可愛がってるのはわかるけど、亜里沙ちゃんが可哀想だと思わない?』



その通りだ、と。


思わず言ってしまいそうになった。


そして出来る事なら、

その可愛がり方は異常だよ、と。


付け加えてやりたかった。



『他人が知った風に口挟むな。』


『…他人、ねぇ。
こんなにお前の行く末を心配してくれてる人間に対して、何て酷い。』


役者なのかと思うほどグスンと鼻をすすった大我さんは、

ため息を混じらせてゆっくりと立ち上がった。



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