わたしの魔法使い
だけどね、僕にはできないんだ。

話してしまえば、きっとお互いに楽なんだよ。

でも、それはできないんだ。

会長との約束だから。


だから、僕はできる限り君に信じてもらうしかないんだ。


「朱里さん。見てて?いい?…ほら。」

僕はとっておきの物を出した。

雨に濡れないように隠していた、小さな花。





今の季節、どこにでも咲いている野花。

何も持っていない。

何もできないけど、笑ってほしいんだ。






「朱里さん。僕は魔法使いの弟子なんだ。君を笑顔にするためにね、偉大なる魔法使いが君の元に行くようにって。だから、僕が君に魔法をかけてあげる。」



僕は君の味方だから。

それが伝わるように。

僕はその花を差し出した。
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