わたしの魔法使い
「おやじさん。キャベツとニラ、頂戴?」

「――らっしゃい!って、にいちゃんか!今日は一人?」

「いや。肉屋で買い物してるよ。」

「なんだ~。つまんねぇなー。連れて来いよー」


八百屋のおやじさんは、朱里のファンらしい。

朱里を連れていくと、盛大に“おまけ”をくれる。


…連れて来ればよかった……

おまけでもう1品くらいおかずができたのに……


まぁ、肉屋でおまけ、もらってるかもしれないけど。


朱里、商店街のおやじさんたちに可愛がってもらってるし。

って、本当に子供みたいだ!


朱里が知ったら怒るだろうな。間違いなく……


「はいよっ!ニラとキャベツ!」

「どうもねー。……って、何?」


買ったものを受け取ろうとすると、おやじさんがなかなか手を離さない。


「いや。彼女さ、にいちゃんが来る前はあんな感じじゃなかったなーって。」

「――?」

「買い物に来ることも少なかったし、あんな風に笑うこともなかったんだよ。いっつも暗くて……それがさ、にいちゃんと一緒に買い物来るようになったら、明るくなって。恋ってスゲーなーって思ってさ。」

「そ、そう?前からあんな感じだと思うけど……」

「いーや!絶対に違う!にいちゃんたち。恋、してんだろ?」


お、おやじさん!顔が赤くなるから!恥ずかしいから!

もう俯くしかないよ……



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